前回に続いて、アルビレックス新潟の印象的な試合を書いていく。
(前回リンクは以下のとおりです。よかったらご覧ください)
kka2b-sportswokataritai.hatenablog.com
③ 2005年 J1第31節 ジュビロ磐田2-3アルビレックス新潟(ヤマハスタジアム)
背景
この試合が始まるまで、12位新潟と入れ替え戦圏内の16位柏レイソルとの勝ち点差は5。間に3チームいて、残り4試合なので、J1残留が見えていたが、決して油断はできない展開だった。その理由が下のとおり
13位名古屋グランパス 30節終了時勝点 35
元々地力がある上、33節に新潟との直接対決をホームで戦えるアドバンテージ持ち
14位大宮アルディージャ 30節終了時勝点 34
この試合までに2連勝と調子を上げているうえ、31節の神戸戦はボーナスステージと化していた。(※この年の神戸は圧倒的な最下位だった)
しかも残り試合は32節のガンバ戦以外は9位マリノス、11位トリニータと中位のチームで降格も上位進出もなく、モチベーションが高くない
また、この試合の裏では15位清水エスパルス(勝点32)と16位柏(勝点31)の直接対決があり、柏は33節に自動降格圏内の17位東京ヴェルディとの試合も控えていた。清水も神戸戦が残っており、柏、清水の双方ともに大型連勝の可能性を十分に残していた。
それに引き換え新潟は、
31節 磐田(日本代表クラス多数、一度も勝ててない相手とのアウェーゲーム)
32節 FC東京(23節から無敗継続中。結果的には12試合無敗でシーズンを終えることになる)
33節 名古屋(言わずもがな、直接対決atアウェー)
34節 浦和(もはや諦めの境地。相性最悪)
4連敗してもおかしくない残りカード。一つ間違えれば奈落の底。残りカード的には新潟が1番厳しいと言っても過言ではなかった。
試合
磐田はスタメンに川口選手、服部選手、田中誠選手、茶野選手、西選手、名波選手、村井選手と言った日本代表経験者が名を連ね、のちの日本代表の1トップを務める前田選手もいた。ベンチにはこの年13得点を挙げ、新人王に輝いたカレンロバート選手や「ゴン」こと中山選手、代表のスタメンを張っていた福西選手も控える豪華絢爛なメンツ。新潟はアンデルソン・リマ選手、ファビーニョ選手、エジミウソン選手のブラジル人3トップで磐田ディフェンス陣と対峙する。
やはりというべきか、新潟は劣勢に立たされる展開となる。しかし、当時磐田からレンタル移籍していた菊池直哉選手を中心にブロックを敷き、失点を防ぐ(この時はレンタル元との試合でも普通に出場できた)。決定機を作らせずに何とか前半を0-0で乗り切り、後半へ。
後半も磐田の攻勢を受ける新潟。しかし何とか耐えると、68分だった。左サイドでファビーニョ選手のパスを受けた寺川能人選手が突破を仕掛けてクロスを上げる。そして中で待っていたエジミウソン選手がダイレクトで合わせる。貴重な先制点を決める。その興奮が治まっていない70分、磐田ディフェンスのクリアミスを拾ったエジミウソン選手がキーパーとの1対1の状況を作り、右足で決めて電光石火の2点目。サポーターの元へ行き喜びを分かち合うエジミウソン選手。そして83分、猛攻を仕掛ける磐田からボールを奪いカウンター。アンデルソン・リマ選手がドリブルで中央部まで運ぶと斜め左へ走るエジミウソン選手へパスを出す。巧みなステップで服部選手とのマッチアップを制して左足で豪快に決めてハットトリック達成。
とはいえ、守備に不安の多かった新潟の試合がこのまま終わるわけが無く、ここから84分にカレンロバート選手、87分に福西選手に決められ一気に1点差に詰め寄られる。その後も最後の最後まで猛攻を喰らったものの、守備陣がなんとか耐え続け、3-2で逃げ切り勝利を挙げた。
結局、裏で行われていた柏VS清水で清水が勝利したこともあり、残留をほぼ手中に収めた新潟。この年の残留を勝ち取る上でも大きな1勝だった。
印象に残ったポイント
後半に見せた、エジミウソン選手の無双状態。68分から83分までのわずか15分で決めたハットトリックは驚異的だった。さすがは「新潟史上最強FW」といったところか。 3点目の直後に見せたサポーターとのハイタッチも印象に残っている。また、終盤に見せた磐田の怒涛の追い上げは、「さすが強豪」という貫禄で印象に残った。
④ 2010年 J1第14節 ベガルタ仙台2-3アルビレックス新潟(ユアテックスタジアム仙台)
背景
この年、南アフリカワールドカップが開催されていた。日本代表の「カメルーン戦での勝利」からベスト16に入り、「パラグアイとのPK戦までもつれ込む激闘の末に破れた試合」までの全4試合はいまだに記憶に残っている方も多いのではないか。
そのワールドカップでは「ジャブラニ」というボールが使用されていた。ボールの感覚がそれまでのボールとは大きく異なっていたことから、世界的な名手が軒並みキックの質に苦労し、フリーキックのゴールが大幅に減るなどしていて、選手たちを含めた関係者からの評判はかなり悪かった。
Jリーグ公式戦でもこのジャブラニが使用されていたが、苦労する選手が多かった記憶がある。しかし、このジャブラニを自由自在に操れる選手が新潟にはいた。そして、この試合で「覚醒」する。
試合
前半36分に仙台FWパクソンホ選手に先制点を奪われ、1-0とリードをされた状態で折り返した新潟。しかし後半に入り、新潟が一気に攻勢を強める。まずは47分、矢野貴章選手の突破からPKを得ると、マルシオ・リシャルデス選手がこれを決めて同点に追いつく。61分に新潟GK東口順昭選手が相手選手との衝突で負傷交代をするアクシデントがあったりもしたが、動揺することなく逆転を狙う新潟はさらに攻勢を強め、68分にはゴールから約25メートル、中央部でフリ-キックを得る。蹴るのはマルシオ・リシャルデス選手。右足から放たれたボールは仙台GK林選手が一歩も動けない完璧なコースに蹴り込み、2点目を奪う。しかし71分に、仙台DFエリゼウ選手がゴールを奪い、2-2の同点に。
仙台はFW中原選手(2006年には新潟に在籍)、新潟はFW大島秀夫選手とそれぞれ攻撃的な投入し、勝ちを狙う展開に。そして迎えた後半アディショナルタイム、新潟は左からのコーナーキックを得る。大島選手、矢野選手、千葉和彦選手、永田充選手といった180センチ超えの選手達が揃い、誰を狙っていくのかというところに注目が集まる中、マルシオ選手はまさかの「直接狙う」という選択。放たれたボールはインサイドに強烈なカーブをかけながら林選手の手をかいくぐるようにゴールに吸い込まれた。この瞬間に、PK・フリーキック・コーナーキックの「セットプレーだけでのハットトリック」を達成してしまったのだ。Jリーグではもちろん、海外も含めてこのような事例はまずない。とんでもない伝説を達成したマルシオ・リシャルデス選手の活躍で、新潟は3-2の勝利を収めた。
印象に残ったポイント
マルシオ・リシャルデス選手のキック精度の高さ。というより、この試合に関してはそれ以外にないと思う。
この年、フリーキックだけで7得点(!?)を叩き出しているが、この仙台戦でのフリーキックがベストゴールだと思っている。
新潟が誇る優良ブラジル人選手たちのハットトリックで勝った2試合を振り返ってみた。改めて振り返ってみても、この2人はすごかったし、この2人のせいでこのあとやってくる助っ人達のハードルが異様に上がってしまったような気もする。阪神タイガースの「バースの再来」的な感じで(笑)
ここで取り上げた2人はその後移籍することになるが、その移籍先では本来の輝きを放てなかった印象。まあ、あの赤いクラブだし、仕方ないかとも思うが(笑)
この2人と同じクラブへ移籍したレオナルド選手にはそんな展開にはなってほしくないと切に思う。
以上