前々回、前回に続いて、アルビレックス新潟の印象的な試合を書いていく。
(前々回、前回リンクは以下のとおりです。よかったらご覧ください。)
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⑤ 2008年 J1第34節 アルビレックス新潟3-2ガンバ大阪(東北電力ビッグスワンスタジアム)
背景
2007年はJ1ではクラブ最高となる6位と躍進した新潟だったが、この年は苦しみ続けた。
・エースのエジミウソン選手と精神的な支柱となっていた坂本將貴選手が移籍したこと
・マルシオ・リシャルデス選手が開幕から暫くケガで離脱していたこと
・エジミウソン選手の後釜で入ってきたアレッサンドロ選手が前任者のような「スピードやテクニックで圧倒するタイプ」ではなく、「ゴールの嗅覚に優れたタイプ」のストライカーだったことによる得点パターンの変化による得点力不足
が重なり、開幕から4連敗を含めて6試合勝利なし。中盤以降、一度は持ち直して、6位まで順位を上げたものの、その後20節以降に大失速。20節から33節までの14試合で2勝4分8敗の勝点10というすさまじい弱さで熾烈を極めた残留争いに巻き込まれ、最終節直前まで残留を決めることができなかった。
(ちなみに最終節まで残留が決められなかったには、この時が初めて)
33節終了時の順位表が以下のとおり。
13位 大宮アルディージャ 勝点40 得失点差-10 最終節 VS磐田(A)
14位 アルビレックス新潟 勝点39 得失点差-15 最終節 VSG大阪(H)
15位 ジュビロ磐田 勝点37 得失点差-7 最終節 VS大宮(H)
----------------(入れ替え戦圏内)------------------
16位 東京ヴェルディ 勝点37 得失点差-10 最終節 VS川崎F(H)
----------------(J2自動降格圏内)------------------
17位 ジェフ千葉 勝点35 得失点差-19 最終節 VSF東京(H)
新潟は自動降格こそなくなったが、引き分け以下の場合には、入れ替え戦圏内の16位に落ちる可能性を秘めていた状態である。
試合
自力残留を果たすためには勝利が必要な新潟は、10分にマルシオ・リシャルデス選手が右サイドを駆け上がり中央へパスを出すと、ボランチの本間勲選手がダイレクトで合わせネットを揺らし、貴重な先制点を奪う。さらに31分には松下年宏選手が右サイドからあげたクロスが直接ゴールに吸い込まれるラッキーな展開で2点目を奪う。直後にガンバMF寺田選手のゴールで1点を返されるも、2-1でリードした状況で前半を折り返す。
ところが後半に入り、残留を意識してしまったか。61分にガンバFWルーカス選手にゴールを決められて、ついに追いつかれてしまう。この時点ではジュビロ、ヴェルディともに同点のまま。双方ともに1点取るような展開になれば、新潟は16位に転落するという状態に追い込まれる。
必死に攻め込む新潟。しかしネットを揺らすには至らず、後半もアディショナルタイムを迎えることになる。新潟は左サイドエリアより少し外のところでフリーキックを得る。松下選手がエリア内、キーパーとディフェンスの間へ速いボールを蹴り込む。ガンバディフェンスが必死のクリアをしてボールをエリアの外へ出すが、その先には内田潤選手が。(内田選手は「なーんかこぼれて来ねえかなあ」と思っていたらしい。 出典はDVD「1999-2013ALBIREX NIIGATA ALLGOALS」)
内田選手がトラップをして右足を振り抜く。新潟攻撃陣とガンバ守備陣が密集していたエリア内を切り裂いてゴールに突き刺さり、勝ち越しに成功。
結局このゴールが決勝点となり、3-2で勝利を収めて、J1残留を自力で決めることに成功した。
印象に残るポイント
やはり内田選手の決勝点のシーン、そしてそのあとにサポーターの元へ走り出したシーンが強く印象に残っている。また、試合終了後に選手達が倒れ込んだシーンも印象に強く残っている。このシーンからもシーズン通して苦しみ続けたことが表れていた。
⑥ 2012年 J1第34節 アルビレックス新潟4-1コンサドーレ札幌(東北電力ビッグスワンスタジアム)
つい先日、3月22日にJリーグ公式からyoutubeに動画投稿されたこの試合。この試合を振り返ってみる。youtubeのリンクは以下のとおりです。(頭に「h」をつけてください)
ttps://www.youtube.com/watch?v=WTV9uoVh7oQ
背景
2011年から苦しみ続けた決定力不足、それが顕在化してしまったのがこの2012年だった。ガンバから獲得したFW平井将生選手は新潟にフィットできずに無得点、ドイツ帰りのFW矢野貴章選手も2得点、FWブルーノ・ロペス選手はこの試合まで5得点と前線の選手達が不振に陥る。加えて新加入のMFアラン・ミネイロ選手はウエイトオーバー気味でフィットに時間がかかりすぎたことも合わさり、シーズンとおして決定力不足で苦しむことになる。
32節終了時で17位と自動降格圏内にいた新潟と残留圏内の15位ヴィッセル神戸との勝点差は5。2試合で勝点差5をひっくり返すことはほぼ不可能に近く、「降格は時間の問題」だと言われていた。
33節のベガルタ仙台戦。優勝争い中のベガルタとのアウェーゲームで、この試合で降格するかと言われていたが、DFキム・ジンス選手のゴールで先制し、この1点を執念のディフェンスで守り切り、1-0で勝利。何とか一縷の望みをつないだ。しかし、この試合でFWミシェウ選手がイエローカードをもらい、最終節出場停止を受けてしまう。さらに柳下監督が審判への抗議で退席処分を受け、最終節の指揮をとれなくなるという事態に陥った。
(仙台戦では疑惑の判定が続出していたことに加えて、後半40分頃のPKになるはずのプレーまで見逃されたことでブルーノ・ロペス選手が興奮・抗議していた。ロペス選手は累積警告を3枚もらっていて、イエローカードを受けると最終節に出れなくなるため、それを防ぐための抗議だった。)
そして、一縷の望みをつないだとはいえ、圧倒的不利な状況であることは変わりなかった。この試合前までの順位表が以下のとおり。
14位 セレッソ大阪 勝点41 得失点差-6 最終節 VS川崎F(H)
15位 ヴィッセル神戸 勝点39 得失点差-8 最終節 VS広島(H)
---------------(J2自動降格圏内)------------------
16位 ガンバ大阪 勝点38 得失点差+3 最終節 VS磐田(A)
17位 アルビレックス新潟 勝点37 得失点差-8 最終節 VS札幌(H)
新潟は、引き分け以下でJ2降格決定。勝っても、神戸かガンバのどちらかが勝った場合にはJ2降格決定となるという状況である。
試合
最終節は全会場が15:30一斉キックオフ。
まずガンバの試合が動く。前半5分に磐田FW前田選手のゴールが決まってガンバは先制点を取られる。
そしてその3分後、新潟はコーナーキックのこぼれ球を左サイドで拾ったアラン・ミネイロ選手のクロス。ブルーノ・ロペス選手が競り合ってこぼれたボールを坪内秀介選手が振り向きざまのシュート。「練習でも10回に1回決まるかどうか」と語っていた坪内選手のゴールが決まって、貴重な先制点を奪う。
その後も攻勢を続ける新潟は30分にアラン・ミネイロ選手のフリーキック、39分には藤田征也選手のシュートと決定機を迎えるが、札幌GK高原選手の好セーブなどで追加点が奪えずにいた。
しかし43分、右サイドからコーナーキックを得る。アラン・ミネイロ選手のボールを石川直樹選手がゴール前へ折り返すと、最後はブルーノ・ロペス選手が押し込み、大きな追加点を奪う。
前半終了時の状況が以下のとおり。
新潟2-0札幌 磐田1-0ガンバ 神戸0-0広島
このままいけば新潟は残留することができる。
しかし後半、札幌はシステムを「3-6-1」から「4-4-2」へ変更し、打開を図るとこれが功を奏す。53分には交代で入っていた札幌FW榊選手がゴールを奪い、1点差に。ほぼ同時刻、神戸はPKで広島に先制点を献上したが、ガンバはMF倉田選手のゴールで1-1の同点に追いつく。
さらに札幌に攻め込まれる新潟はピンチを迎える。札幌MF古田選手の鮮やかすぎるスルーパスから榊選手に決定機。新潟GK黒河貴矢選手との1対1になったが、これは外した。いつ同点に追いつかれるか分からない状態の新潟、いつ逆転するわからないガンバ(ガンバは同点に追いついた以降も決定機を何度も作っていた。)。気が気でなかった。
その窮地を救ったのがアラン・ミネイロ選手だった。71分にゴールまで約25メートルのところから超低空スーパーミドルを決めて、新潟は大きな追加点を奪う。さらに80分にもアラン・ミネイロ選手がミドルシュートを放つ。高原選手にはじかれるものの、こぼれ球を拾ったアラン・ミネイロ選手が高原選手をかわしてクロスを上げる。ブルーノ・ロペス選手が押し込み4点目を奪い、試合を決めた。
結局、新潟は4-1で勝利。しかし新潟の結果だけでは残留出来ないため、他会場を待つことになる。するとガンバは85分に磐田MF小林選手(後に新潟へ移籍することになる)にゴールを許したまま1-2で敗戦。神戸も0-1でそのまま敗戦。新潟は奇跡の残留を果たした瞬間だった。
印象に残るポイント
「奇跡は起きるものなんだな」と改めて感じさせてくれた試合。
ちなみに、この試合をスカパー系列で解説していたのは玉乃淳さん。8年後に新潟のGMになる方である。
さらに余談だが、この試合の実況を担当していたのは西岡明彦さん。2008年の「ジェフ 奇跡の残留」の時もジェフ戦で実況を担当していた。この人は何か持っているのかもしれない。
最終節で残留を果たした2試合を振り返った。
確かに印象に残った試合だったが、できればこんな思いはしたくない。将来的には残留ではなく優勝争いで感動したいものだ。
以上