今回がこのシリーズの最後。これまでの記事は以下のリンクのとおりです。
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⑦ 2003年 J2第44節 アルビレックス新潟1-0大宮アルディージャ(新潟スタジアム)
あまりにも有名な試合だが、やはりこの試合は外せないだろう。
背景
2001年は4位、2002年は3位と昇格争いに絡みながらも、あと一歩及ばないシーズンが続いた新潟。2003年こそ昇格へと意気込む新潟は元日本代表MFの山口素弘選手を中心に、DFアンデルソン選手、MFファビーニョ選手、FW上野優作選手などを獲得。3年目を迎えた反町康治監督の下、昇格を目指した。
シーズン序盤は苦労した。開幕10試合で5勝1分4敗の勝ち点16で4位。首位サンフレッチェ広島とは勝点12差をつけられていた。
しかしここから14試合で10勝3分1敗という怒涛の快進撃を見せる。そして、24節のアビスパ福岡戦で劇的な逆転勝利を収めて、首位に浮上する。そこから18試合にわたって首位を守り続けて、43節のアウェー福岡戦で昇格するかと思われていた。ところが、この試合では86分に福岡MF古賀誠史選手にスーパーミドルを決められるなどして1-2で敗れ、昇格を決められず。そして首位の座も広島に奪われてしまう。
なお、広島はこの節で昇格を決めており、残り1枠を3位川崎フロンターレと争う構図となって最終節を迎えた。
この試合前の順位表は以下のとおり。
1位 サンフレッチェ広島 勝点86 得失点差+31 最終節 VS川崎F(A)
2位 アルビレックス新潟 勝点85 得失点差+39 最終節 VS大宮 (H)
---------(J1昇格圏内)-----------
3位 川崎フロンターレ 勝点82 得失点差+40 最終節 VS広島 (H)
新潟は引き分け以上で昇格決定、負けても川崎が引き分け以下で昇格という圧倒的に有利な条件であった。しかしこの2年間、勝負所で敗戦を喫していたことに加え、終盤の川崎・広島といった昇格争い直接対決で敗れていたこともあり、勝負弱さが出てしまうことへの不安もあった。
試合
前節で決められたはずの昇格。それを逃した選手たちの気合は試合前から伝わってくる。多くの選手たちの頭が丸刈りのような状態。そして選手入場の時には手をつなぎながら入場してきた。
重苦しい展開を予想していたこの試合。しかし、そういうときほど予想外の展開が起きるもの。前半10分のことだった。ゴールから約25メートルあたりで得たフリーキック。キッカーはJ2得点王のマルクス選手。右足から放たれたボールはエリアの中にいた大宮守備陣に防がれたものの、こぼれ球を懸命に拾う新潟攻撃陣。そして、必死につないだボールが上野選手の下へ。左足で巧みにボールを持ち替え、右足でシュートを放つ。ジャストミートではなかったが、それが功を奏したか。大宮守備陣の脚の間を抜け、キーパーのタイミングも外し、ゴールへと吸い込まれる。大きすぎる先制点が新潟に入る。
その後も新潟は多くのチャンスを作る。マルクス選手やファビーニョ選手を中心にチャンスを多く作り、追加点を奪おうと攻め込む。しかし、目の前での昇格を許すものかとかと大宮も守り続ける。
チャンスを決めきれないと流れは変わってくる。FWバレー選手やMF伊藤彰選手(現ヴァンフォーレ甲府監督)を中心に攻撃を繰り出す大宮攻撃陣に徐々にチャンスを作られるようになる。それでも、アンデルソン選手や丸山良明選手、野澤洋輔選手を中心にした新潟守備陣が必死に守る。
前半を終え、1-0で新潟はリードしたまま折り返す。一方の川崎VS広島は1-1で前半を折り返す。
後半も新潟は攻め込まれる展開。残り45分守り切れば昇格。しかしその45分が長く感じる。マークも甘くなり、大宮の選手がフリーの状態でボールを受けることが多くなる。サイドへ開いてボールを受けに行くバレー選手や中央で待ち構える長身FW盛田剛平選手の動きに何度肝を冷やしたか。それでも、水際での必死の守りで得点を許さない。
川崎では81分、FW我那覇和樹選手のゴールが決まり、2-1と川崎がリードを奪ってそのまま試合終了。
新潟はもう負けてはいけない状況になる。1点でも許せば一気に崩れかねない、そんな雰囲気があった。しかし、最後のところで守り続け、1-0で後半アディショナルタイムへ。
93分、最後の最後にに大きなピンチがあった。大宮の前線へのロングボール。新潟守備陣が目測を誤り、大宮の決定機が訪れる。しかし、エリアの中で大宮の選手が転倒。野澤選手がボールを抑え、何とか事なきを得た。
そしてついにその時が訪れる。94分、主審が笛を吹き、試合終了。
1-0で新潟勝利。この瞬間、新潟はJ1昇格、さらに広島が川崎に敗れていたため、J2優勝も同時に達成された。
試合後、反町監督は「新潟のおとぎ話の第一章が完結した」と語った。反町監督らしい表現で語られたこの言葉は、今でも多くの新潟サポーターの心に残っている。
やはり最後はこの試合だろう。
この試合を超える試合はいまだに出てきていない。観客動員数42,223人はいまだにクラブ最高記録。それだけの試合だったといえる。
以上