日本生命セ・パ交流戦2021が「ほぼ」閉幕。
(広島東洋カープ、埼玉西武ライオンズ、北海道日本ハムファイターズは残り試合があるため、「ほぼ」としている)
新型ウイルスの関係もあり、2年ぶりの開催となったこの交流戦、制したのはオリックス・バファローズだった。
交流戦前は18勝22敗7分のパ・リーグ5位だったバファローズ。
それが、この交流戦期間で12勝5敗1分と言う成績で見事に借金を返済するばかりか、貯金に転じるまでの奮闘ぶりを見せ、パ・リーグ3位に浮上。さらに、4位の千葉ロッテマリーンズに1.5ゲーム差をつけることに成功すると、2位の福岡ソフトバンクホークスと0ゲーム差に、首位の東北楽天ゴールデンイーグルスとも2ゲーム差まで縮めることにも成功。お見事な戦いぶりだった。
この交流戦での強さを生み出した理由は多くある。
①「強力先発投手陣の存在」
元々評価の高かった先発投手陣だったが、特に6月6日のドラゴンズ戦からの6試合は素晴らしかった。
6月6日 VSドラゴンズ 増井浩俊投手 6回無失点
6月8日 VSジャイアンツ 山岡泰輔投手 7回2失点
6月9日 VSジャイアンツ 宮城大弥投手 7回1失点(被安打1)
6月10日 VSジャイアンツ 山崎福也投手 6回無失点
6月11日 VSカープ 山本由伸投手 8回無失点
6月12日 VSカープ 田嶋大樹投手 5回無失点
当然ながら、この間は5勝1分で無敗。先発投手がこれだけしっかり試合を作れば、チームの戦いも安定するのは必然だ。
また、交流戦期間中、山本投手は3勝無敗、宮城投手は2勝1敗、山岡投手は1勝1敗ながら、HQS(ハイクオリティースタート、7回以上2自責点以下)を3登板中2回見せた。山崎投手、増井投手もゲームを確実に作れば、苦しみ続けた田嶋投手もカープ戦で見事な投球を見せ、復活の気配を感じさせた。
②「若手・中堅・ベテランが融合した救援陣の存在」
シーズン開始から「ウィークポイント」と言われていたのが、救援陣だった。特に守護神を固定することができずに苦しんでいた。ブランドン・ディクソン投手が来日できずに退団したことから始まり、平野佳寿投手がケガ、漆原大晟投手も抑えに定着できずに配置転換、タイラー・ヒギンス投手もまた、ケガで本調子ではなく、2軍降格・再調整を味わった。
しかし、中嶋聡監督はその抑え不在の期間中にK-鈴木投手や富山凌雅投手、村西良太投手といった若い選手達を起用していった。そしてこの起用によって選手層が一気に増すことになる。
交流戦期間中の成績
K-鈴木投手 7試合登板 6イニング4自責点 1セーブ
トピック→
5月30日のスワローズ戦でセーブを挙げる。
富山凌雅投手 7試合登板 6・2/3イニング1自責点
トピック→
①5月30日のスワローズ戦で好リリーフを見せ、プロ初勝利
②6月12日のカープ戦で2点リードの6回、無死満塁の場面から登板し、併殺打とセカンドゴロで切り抜ける好リリーフ
村西良太投手 8試合登板 4・2/3イニング4自責点
トピック→
①6月3日のタイガース戦で同点の7回、2アウト1・2塁、バッター・マルテ選手という場面で登板し、三振に打ち取る好リリーフ。その直後に勝ち越してプロ初勝利
②6月10日のジャイアンツ戦で打球を受けた能見篤史投手の代わりに緊急登板するも、1球でリリーフ成功。
さらに、交流戦期間中にヒギンス投手・平野投手・澤田圭佑投手が復帰すると、
・「8回・ヒギンス投手、9回・平野投手」という強固な勝ちパターンを形成
・澤田投手、K-鈴木投手、富山投手、村西投手、山田修義投手あたりの若手・中堅勢が6回・7回を担当し、ベテランの能見投手や比嘉幹貴投手の負担を軽減する。
といった形で、非常にバランス良く回るようになった。
③穴の無い打線の構築
奮闘していたのは投手陣だけではない。野手陣の奮闘もまた素晴らしかった。
元々、今シーズンは「ホームランが出る打線」として知られるくらいには長打力に定評はあり、吉田正尚選手のさらなる進化、杉本裕太郎選手や宗佑磨選手、紅林弘太郎選手の台頭でチーム全体の長打力は明らかに増していた。しかし、
・チーム出塁率がそれほど高くなかったこと
・1、2番を固定できなかったこと
などもあり、それに得点力が比例しているという感じではなかった。
しかし、その問題を解決させたのは福田周平選手の復帰、それに伴う宗選手の2番起用だった。
高出塁率を誇り、優れた選球眼と高いミート力・カット力で相手投手に多くの球数を投じさせる1番・福田選手、選球眼の良さに加えて、長打力もある2番・宗選手の存在は相当大きかった。
この2人のどちらかは高確率で出塁し、吉田正尚選手や杉本選手を中心とした「長打力自慢の中軸にランナーがいる状態で回す展開」が増えることになった。
さらに相手投手陣にとって厄介だったのは、Tー岡田選手の復調、安達了一選手の仕事人ぶり、伏見寅威選手の勝負強さ、紅林選手の長打力が一気に嚙み合ってきたことだろう。こうなると上位から下位まで全く油断のできない、穴の無い打線となってくる。
さらにベンチに控えるアダム・ジョーンズ選手の代打適性は素晴らしく、ここまでの代打成績は17打席で11打数7安打6四球。ちょっと異常なレベルである。交流戦期間中も4打席で2打数2安打2四球と結果を残した。2安打は6月8日、9日のジャイアンツ戦で見せたもので、いずれも貴重なタイムリー。2四球は6月11日のカープ戦で見せた、杉本選手へ繋いだものと、6月13日のカープ戦で見せた、T-岡田選手へ繋いだものというもの。その代打適性でチームを救ってきた。
結果として、交流戦期間中のチーム打率は.287と12球団中2位、96得点を記録した得点力は12球団中1位と素晴らしい成績を挙げてみせた。
私が考える交流戦制覇の主要因はこの3つだ。
問題はリーグ戦でこの好調が維持できるかというところだが、ポジティブな要素は多くあると思っている。
①西野真弘選手の一軍復帰によって増した二遊間の層
6月11日のカープ戦から一軍に合流した西野真弘選手。この選手の存在は大きいとみている。ボールを選べて小技が利き、巧打を誇る左打者は、チームにとってはかなり貴重。今後必ず起こるであろう、「打線の組み替え」の際、2番に置いてつなぎ役を任せることも、7番や8番に置いて、中軸が還し切れなかったランナーを還す役割を任せることもできる。万能な西野選手が居てくれるのは本当に大きい。
ただでさえ安達選手を定期的に休養させること、紅林選手が今後バテてくることが想定されるという面を踏まえても、この西野選手の役割は大きくなるはずだ。
②頓宮裕真選手、太田椋選手という長打力のある若手選手が控える
現在二軍調整中の頓宮裕真選手、太田椋選手という長打力に定評のある若手2人。この2人が復調し、一軍に戻ってくる時が必ず来る。1年間フルで一軍に帯同した経験のない杉本選手や紅林選手が疲労による不調で長打を打てなくなった時にこの2人が復帰し、チームを救うことが期待される。
③助っ人3選手の復調
スティーブン・モヤ選手、ジョーンズ選手、ステフェン・ロメロ選手の助っ人3選手。まだまだ本来の出来ではない。少なくとも、今より悪くなることは考えにくい。
この3選手が本来の調子を取り戻すことができれば、スタメンの組み方や代打の起用法にもバリエーションが生まれるし、長打力の増大も期待できる。強力打線の形成のためにはこの3人の復調は必要不可欠だ。
④まだまだいる、実力派リリーバーたち
若手投手陣の台頭で層が増した救援陣だが、まだまだ実力派は控えている。吉田一将投手、吉田凌投手、海田智行投手、黒木優太投手はまだ一軍に呼ばれていない。アンダーハンドの中川颯投手が二軍で好投を続けている。この5人はどこがで一軍を助ける役割を任せられるはずだ。
今後、疲労などで調子を落とすリリーバーも間違いなく出てくる。そういった時にも、こういった実力派が控えているのは、大きな支えになるはずだ。
こうして書いていっても、「好材料が多いな」と感じた。
もちろん、現時点の戦力だけ見れば、イーグルスやホークスに比べてやや見劣りしているし、ライオンズ、マリーンズ、ファイターズと比べて勝負どころの経験が少ないのは否定できない。
それでも、その不安を払拭できるだけのポテンシャルとパワーを持っているのが、今年のバファローズだ。
叶うべき夢の先へ、バファローズの躍進に期待したい。
以上