新潟攻撃陣の軸となっているのが、No.9 ファビオ選手。
10月11日時点で18試合出場で5ゴール4アシストと言う数字。これだけだと「FWとしては若干物足りないのでは?」という印象を与えてしまいかねない。
(特に先日対戦し、得点を決められた京都のピーターウタカ選手が24試合出場で18ゴール3アシストということを考えると余計にそう見られそうだ。)
しかし、ファビオ選手の貢献度はゴール・アシストという「目に見える数字」だけでは表せられない。恐らく多くのファン・サポーターの方々がそう思っているだろうし、ファビオ選手の貢献度の高さは十分わかっているとは思うが、あえて今回はファビオ選手について書いていく。
まずポストプレーの上手さ。24節町田戦・中島選手のゴールシーンや25節京都戦・田上選手のゴールシーンにつながるポストプレーなんかは絶品。
町田戦では新井選手からのパスをダイレクトで(しかもヒールパス)で高木選手へはたくプレー。今までの新潟ではまず見ることはできなかった素晴らしいプレー。
この後のランニングも質が高く、結果として中島選手がフリーで受けられるスペースを作ることができた。
(そのプレーは以下の動画の1分09秒からの流れ。1分17秒にヒールパス)
京都戦では、
①斜めにハイスピードでランニングして田上選手のパスを受ける
②体を張って味方が上がる時間をしっかり作り、大本選手にはたく。(ここで時間を作っている間に田上選手・堀米選手・本間選手がエリア内に侵入し)
③その後もすぐにエリア内に入り、こぼれ球に対応できるような位置に入り直す。
という「ポストプレーヤーにやって欲しいプレー」がすべてつまったような素晴らしいものを見せてくれた。
(そのプレーは以下の動画3分03秒からの流れ。3分08秒あたりから3分20秒まで①~③のプレーを一連の流れで行っている。)
もともとボールを味方に捌ける技術は高いものがあり、これまでも貢献していたが、特にここ最近は高確率で味方につなげている上、そのプレーがゴールに直結するようになっているので、このポストプレーには今後も注目してもらいたいところ。
②守備面での貢献
守備での貢献度もかなり高い。相手DF、GKへのチェイシングはもちろんのこと、ただ追いかけるだけでなくパスコースを限定する動きを見せるなど、守備でも多くの種類の動きを見せることが出来る。さらに、ボールを奪われてカウンターを喰らいそうになった時には、ボールホルダーにチェイシングを行い、カウンターを遅らせる。そして、新潟守備ブロック形成の時間を作るなどの動きもできる。先述した町田戦や京都戦でもボールを奪われた後にハーフウェーラインを超えたところまでチェイシングをして、カウンターを遅らせたり、前線から積極的なプレッシングをして相手のパスコースを限定し、ボールを奪いやすくするなど、しっかりと効果的な動きを見せていた。
①相手守備陣にプレッシャーをかけ、素早いビルドアップをさせないようにする
②さらに、相手のパスコースを限定することで、後ろにいる味方選手たちが動きやすくなる(ファビオ選手のプレッシングで相手のパスコースが少なくなっているので、その少ない選択肢を消せばいいということで味方も動きやすくやる)
③追い込まれた相手がやむを得ず大きく蹴り出したボールを奪って、再び新潟ボールにする
こうした動きを繰り返すことで、新潟のボール保持率の高さ(10月11日時点でリーグ5位の55.4%)に貢献している。
守備に参加しない選手も多いブラジル人FWの中では、こうした守備をしてくれる選手というのはかなり異色な存在である。
今年の新潟は、アルベルト監督の下で、「守備をしない選手は使わない」という方針を貫いている。
(実際、今シーズン通して、ファビオ選手をはじめ、渡邉新太選手やシルビーニョ選手といった、「守備もするFW」が最前線で使われているところからもそういった方針が伝わってくる。)
その点、「チェイシングする」「パスコースをしっかり消せる」「『アリバイ守備』ではなく、『効果的な守備』をする」ファビオ選手は、アルベルト監督にとっては「最高級のFW」といっていいだろう。鄭大世選手やペドロマンジー選手、矢村健選手や田中達也選手といったタレント豊富なFW陣の中で、ファーストチョイスとして起用されていることからも、その信頼が窺える。
③チームの攻撃パターンの多様化
ファビオ選手と言えば、192センチという大柄な体躯が印象的だ。その体躯を活かしたポストプレーをこなしていることはすでに先述しているが、その体躯を持ちながら、スピードもしっかり備わっている。スペースへの飛び出しや相手ディフェンスラインの裏への抜け出しなどのプレーも高次元でこなせることから、新潟の攻撃パターンの引き出しを豊富にすることが出来る。
「ポストプレーはできるが、スピードが足りない」
「スピードはあるが、ポストプレーするにはややフィジカルが物足りない」
といった「どちらかが足りない」ではなく、「どちらも高次元」なFWは本当に貴重だ。チームの攻撃パターンを豊富にできる存在は、そう簡単には見つからない。相手守備陣も「多くの攻撃パターンを持つチーム」と対峙して、楽だと思うはずがない。そういったところでの貢献度も高い。
そんなファビオ選手だが、得点・アシストがなかなか伸びてこなかったこともあってか、町田戦ではベンチで涙を流したシーンがあったようだ (そのあたりは「やっぱりFWなんだなぁ」と思う)。
しかし、京都戦では決勝点となる堀米選手のゴールを見事にアシスト(この時のパスの受け方、ラストパスは最高だったので、是非見ていただきたい)。数字に表れるところでも久々に結果を出せたことは、今後の昇格争いに向かって進んでいくチームにとっても、何よりファビオ選手にとっても大きなプラスだ。
欧州でも活躍できるほどのポテンシャルを持つファビオ選手の今後の活躍にも期待していきたい。
10月19日 追記
この記事を上げた4日後、道路交通法違反(酒気帯び運転)を行なっていたことが発覚。
10月19日付で新潟との契約解除が言い渡された。
酒気帯び運転は罪なき人の命を奪うこともある大罪であることは間違いなく、彼の行ったことは許されるものではない。
このような形で終わってしまうのは非常に残念に思うが、これから先のサッカー人生は長い。
二度とこのような過ちを起こさないようにしてもらいたい。
以上