○2024シーズンへの本気度
○「ニイガタスタイル」の更なる進化
○タイトルレース参戦への覚悟
アルビレックス新潟のオフシーズンの動きは、上記3点を示すには十分すぎるものであった。
まずは、他クラブからのオファーも報道されていた守護神・小島亨介選手の慰留に成功。この小島選手を中心に、多くの主力選手がチームに残留してくれたことで、チームのベースは崩すことなくシーズンインできそうである。
攻守に貢献度が高かったボランチの高宇洋選手はFC東京へ移籍したものの、いわきFCで評価を高めていた宮本英治選手をすぐに獲得。
宮本選手は圧倒的な運動量を武器に攻守に高い貢献度が期待できる「ボックストゥボックス型」のボランチでありながら、左右のサイドバック、3バックの時のセンターバック、トップ下も可能なポリバレント性も併せ持つ、J2屈指のMFである。非常にいい補強をしたという印象であった。
そして、衝撃を与えたのが、
○サガン鳥栖で「10番」を背負い、キャプテンを務めていた小野裕二選手
○ヴァンフォーレ甲府で「10番」を背負い、副キャプテンを務めていた長谷川元希選手
この2選手の獲得である。
小野選手、長谷川選手について簡単にご紹介すると以下のとおり。
【小野裕二選手】
・キャリア変遷
小野選手は、10代の頃からあふれる才能を見せつけていた選手であり、名門横浜F・マリノスユースで別格の存在感を示していた。それだけでなく、トップチーム昇格1年目の2011シーズンには高卒新人ながら「10番」を背負ったほどに若くして圧倒的な才能を見せていた。
2013シーズンからベルギーリーグに移籍したが、そこで大きなケガを幾度も負ったこともあり、才能を発揮するには至らなかった。しかし、その時期に苦労した経験が今の小野選手を作ったということになるだろう。
Jリーグに復帰後はサガン鳥栖とガンバ大阪に在籍。特にサガンではキャプテンを務め、チームをまとめる役割も果たすなど、人間としての成長も見せ、選手としての円熟味を増している。
・プレー面
プレー面を見ると、まず目を引くのは高精度なシュート。2023シーズンは35本のシュートで9ゴールを決めており、この数字だけでも決定力の高さが分かる。また、171センチながら、ヘディングでのゴールも多い。ポジション取りの巧みさが窺い知れる。
さらに、パスの正確さやトラップのうまさ、フィジカルの強さ、ドリブルの推進力もハイレベルで兼ね備え、「捌ける・運べる・時間を作れる・撃てる」という攻撃に必要な要素を1人でこなせてしまう万能型アタッカーといっていいだろう。
メインポジションとしてはセンターフォワードやトップ下だが、攻撃的なポジションであればどこでもハイレベルに対応できる点もチームにとっては有難いところだ。
【長谷川元希選手】
・キャリア変遷
法政大学在学中にヴァンフォーレ甲府に特別指定選手として登録されていた長谷川選手は、2021シーズンから正式にヴァンフォーレに入団。1年目から攻撃のタクトを掌握すると、高いドリブルスキルと圧倒的なテクニックで攻撃陣を牽引し、2022シーズンにはチームを天皇杯優勝に導くなど、「ヴァンフォーレの顔」として、チームを背負い、結果を残し続けてきた。天皇杯優勝に伴って、2023シーズンはアジアチャンピオンズリーグ(ACL)にも参戦。J2リーグ42試合の長丁場を戦いながら、ACLの戦いに挑むという厳しいスケジュールながら、年間通して圧倒的な存在感を示し続けた。
・プレー面
簡単に言えば、ドリブル、パス、シュート、セットプレーのキッカー、どれもハイレベルでこなせてしまう万能型アタッカーである。相手守備陣からしてみれば、
○ドリブルを封じたと思えばキラーパスを出され
○パスを封じれば華麗なトラップからシュートを打ち込まれ
○パスもシュートも封じたと思えば、ドリブルであっさりとかわされ
○ドリブルもシュートもパスも封じたと思えば、セットプレーでチャンスを演出される
「止めようがない」選手である。
少なくともこの3年間、J2で長谷川選手を超える万能型アタッカーは誰1人としていなかったと自信をもって言える。
また、怪我にも強い身体をしている点も心強いところだ。加入してから3年間の成績が以下のとおり。
2021シーズン:36試合出場7ゴール6アシスト
2022シーズン:40試合出場8ゴール4アシスト
2023シーズン:39試合出場7ゴール6アシスト(ACL 5試合出場2ゴール)
このように、長期離脱をすることなく、その上で安定した成績を残せ、計算が立つ選手であることがよくわかる。ケガがちな選手も多いアルビレックスにとっては、このような選手の存在は貴重である。
メインポジションとしては、トップ下・サイドハーフといったところ。トップ下であれば高木善朗選手や長倉幹樹選手との競争、サイドハーフであれば三戸舜介選手の後継者的な役割を果たしながら、小見洋太選手や太田修介選手などと競争をすることになるだろう。いずれにしても、チーム力の強化には大きく貢献することになる。
さて、小野選手と長谷川選手の獲得はアルビレックス攻撃陣に何をもたらすか。
私が思う「3点」をここでは紹介する。
①攻撃陣の選択肢
小野選手と長谷川選手の加入によって、攻撃陣の選択肢は確実に広がる。
小野選手は1トップのセンターフォワードとしての起用をメインとしそうだが、トップ下やサイドハーフでの起用も想定され、鈴木孝司選手や谷口海斗選手、長倉幹樹選手との共存も可能。状態次第では、鈴木選手、谷口選手、長倉選手との2トップを組むことも可能と、起用法の幅は大きく広がる。
長谷川選手もまた、トップ下だけでなくサイドハーフでも起用可能で、マルチな活躍が期待できる。パサーにもドリブラーにもクロッサーにも、そしてスコアラーにもなれる変幻自在なプレイヤーであるため、高木善朗選手との共存でチャンスクリエイターを同時に起用するというワクワク感を楽しめる可能性もある。
②意外性
アルビレックスの選手達には足下の技術が高く、「巧さ」を感じさせる選手が非常に多い。その一方で、意外性のあるプレーをする選手は少ない印象である。
昨シーズン途中まで在籍していた伊藤涼太郎選手は「なぜそこが見えているんだ!?」というプレーを見せることが多かったが、現チームではそういったタイプは少ない印象だ。
しかし、小野選手と長谷川選手の加入は、チームに足りない「意外性」をもたらすことが期待できる。以下のプレー集(DAZN公式より)を見てもらえれば分かりやすいが、「ここでその選択肢をとるのか!?」というプレーが多い。
上手さはもちろんのこと、「相手守備陣に対してより怖さを与えることができる意外性」を持っている2人の加入は、確実に攻撃力をアップさせることに繋がるはずだ。
③得点力
上記した①、②の効果により、チーム全体の得点力はかなり高まるはずである。
2023シーズンのアルビレックスは、
ボール支配率:56%(J1リーグ1位)
パス平均本数:600.7本(J1リーグ1位)
シュート平均本数:12.9本(J1リーグ4位)
ゴール期待値:1.122(J1リーグ16位)
得点数:36得点(J1リーグ16位)
(「Football LAB」さんより)
このスタッツが示すとおり、「ボールを支配し、パスを回す攻撃の形はできているが、決定的なシーンを作ることがうまくなく、加えてシュート精度も欠けていた」といえる。
より決定的なシーンを生み出し、より多くの得点を奪うためには、
○相手守備陣に的を絞らせない多くの選択肢
○相手守備陣を翻弄する意外性
をチームとして持っておく必要があると私は考えている。
前述のとおり、小野選手と長谷川選手は複数ポジションをハイレベルで対応でき、プレー面では相手守備陣を欺くような意外性のあるプレーができる。
上記した2点を解決するにはジャストフィットな補強といえ、チームの得点力の大幅増をもたらすことになるだろう。
以上のとおり、小野選手、長谷川選手の加入によってチームにもたらされるものについて書いていった。
2024シーズンのアルビレックスは攻撃力に注目していきたい。
以上