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ベースを維持し、スケールアップを果たしたアルビレックス新潟

松橋力蔵監督就任という新しい波がやってきたアルビレックス新潟

2021シーズンはJ2リーグ6位という順位に終わったが、個々で残した成績は素晴らしく、多くの選手の「個人昇格」がウワサされていた。

しかし、結果として「個人昇格」したのはボランチ福田晃斗選手(→サガン鳥栖)のみ。契約満了となったロメロフランク選手(→鹿児島ユナイテッドFC)を含めても、20試合以上出場した選手の退団を2人に留めた。

特に大きいのはセンターラインの維持だ。

ゴールキーパー阿部航斗選手

センターバック舞行龍ジェームズ選手千葉和彦選手

ボランチ島田譲選手高宇洋選手

トップ下の高木善朗選手

センターフォワード鈴木孝司選手谷口海斗選手

といった主戦力を軒並み残留させられたのは大きい。チームの背骨となる中央部を維持できたことで、ベースを崩さないチーム作りに成功した。

さらに、左サイドバック、そしてキャプテンである堀米悠斗選手、J2屈指の右サイドバック藤原奏哉選手も揃って残留したことで最終ラインの主戦力は全員が残留することとなった。昨シーズン42試合で40失点1試合平均1失点以下のディフェンスラインを引き続き形成できることは新体制を迎えるにあたっての大きなアドバンテージとなる。

 

2021シーズン、J2リーグ1位となる61.3%のボール支配率を実現させたのは、足下の技術に長けた上記に記載した選手たちの存在だ。その選手たちを軒並み残留させられたことで、2021シーズンからさらに「シンカ」(進化・深化)したポゼッションサッカーが実現しそうだ。

 

 

これだけでもそれなりに評価に値するこのオフの動きだが、今年のアルビレックスは違った。それを物語るのが、以下の点だ。

トーマスデン選手の加入

32歳の舞行龍選手36歳の千葉選手という両ベテランが主戦となっていたセンターバック。この2人はアルビレックスのサッカーに必要不可欠な足下の技術守備力の高さを持っていたが、スピードに難があった。ディフェンスラインを高く設定サッカーを志向するが故、裏抜けを得意とし、スピードのあるFWがいるチームを相手にした時には手を焼く傾向があったアルビレックス大宮アルディージャ中野誠也選手ファジアーノ岡山上門知樹選手(2022シーズンからはセレッソ大阪に移籍)は何度同じ形でゴールを許したことか...。

それを解消する特効薬となり得るのが、浦和レッズから加入したトーマスデン選手だ。圧倒的なスピードを持ち、オーストラリア代表歴も持った24歳はJ2では反則レベルのポテンシャルを誇る。アルビレックス守備陣のウィークポイントであった「スピード勝負」を1人でストロングポイントに変え得る存在だ。

 

3人の強力ウイングの加入

アルビレックスのストロングポイントである「強力ウイング陣」

日本のみならず世界からも注目される「No.10」「新潟の至宝」本間至恩選手を中心に、三戸舜介選手小見洋太選手といった高卒2年目の有望株、2022シーズンから加入するシマブクカズヨシ選手「キングケン」こと矢村健選手、テクニシャンの星雄次選手と、個性豊かなウイング陣を誇るアルビレックスだったが、このオフは3人の強力ウイングを迎え入れた。

浦和レッズから加入したのが伊藤涼太郎選手作陽高校時代から注目されていたドリブラーだが、パスやシュートの技術もかなり高い選手で、テクニックはまさに「天才」の呼び名に相応しい。サイドだけではなくピッチ中央部でも力を発揮できる選手だ。トップ下やセンターフォワードとしても起用可能で、先発・途中投入どちらでも高い攻撃能力を発揮できる選手だ。

横浜F・マリノスから期限付き移籍で加入したのが松田詠太郎選手。この選手もまたドリブルに特徴のある選手。ピッチ中央部よりはサイドでドリブルや周りとの連携を活かしながら力を発揮するタイプで、前述した伊藤選手とはまた違う特徴のある選手だ。高卒1年目の2020シーズンからマリノス15試合に出場しているのが、松田選手の圧倒的な才能を物語っている。

柏レイソルから期限付き移籍で加入したのがイッペイシノヅカ選手。力強いドリブルが有名な選手だが、強靭なフィジカルや強力なシュートも武器となる選手。エリア内に位置取り、シュートを狙っていくプレーもよく見られる。

また、サイドバックウイングバック・トップ下・ボランチでも起用された経験があり、万能性も持ち併せているアルビレックスでいうと、ロメロフランク選手にスピードと若さを加えたイメージか。

 

渡邊泰基選手の復帰・長谷川巧選手の残留、田上大地選手の完全移籍移行

サイドバック堀米選手、右サイドバック藤原選手という強力なレギュラーがいるが、その2人ですら危機感を募らせるだけの選手が控えている。それが上記の3人だ。

ツエーゲン金沢から1年半ぶりの復帰を果たしたのが、22歳の左サイドバック・渡邊泰基選手ツエーゲンでは1年半で64試合に出場名将・柳下正明監督の下で鍛えられた若武者が左サイドバックの定位置争いを激化させることは間違いない。

サイドバックで期待されるのは長谷川巧選手。2021シーズンにアルビレックスに復帰したが、左膝前十字靭帯を痛めたこともあり、5試合の出場にとどまった。しかし出場した試合では藤原選手とは異なるプレースタイルを見せ、存在感を発揮していたこのオフに他クラブへのレンタル移籍もあり得るかと思われたが、契約更新でアルビレックスで戦うことを決意。右サイドバックの定位置争いを強力にする。

そして左右のサイドでプレー可能なのが田上大地選手。本職はセンターバックだけあって守備力もあり、元FWらしく足下の技術や攻撃能力の高さも武器の選手。また、フリーキックのキッカーとしても期待できる選手だ。レイソルへの復帰もあり得るかと思われたが、アルビレックスへの完全移籍加入が発表され、完全に「新潟の男」として戦う。

 

 

多くの主力を残留させた上、強力な「個の力」を持った選手が加入した2022シーズンのアルビレックス新潟。J1復帰は夢物語ではないところまで来ている。

「白鳥の大逆襲」が始まる

 

以上