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「アルビレックス新潟 ボランチ問題」を変えた起用法

今シーズンの開幕前、数多くのアルビサポの中ではアルビレックス新潟 ボランチ問題」が巻き起こっていたのではないだろうか。私もそんなアルビサポの1人だった。その証拠に、シーズン開幕前に書いた以下の展望記事にはこう記している。

・「単純に枚数が少ない。」

・「特に「ボール奪取・回収系」が少なく、高選手が離脱した場合、または累積警告による出場停止になった場合は、相当苦しくなる。」

 

kka2b-sportswokataritai.hatenablog.com

 

 

①そもそもアルビレックス新潟 ボランチ問題」とは何か。

 

端的に言えば、「レギュラークラスのボランチが圧倒的に少ない」というものである。

開幕前の展望では、高宇洋選手島田譲選手の2人がレギュラークラスだが、控え組との差があまりにも大きいと見ていた。

昨シーズンまでは高選手と島田選手に加えて、福田晃斗選手ゴンサロゴンザレス選手といたため、層が厚いという見方をされることが多かった。(ゴンサロ選手はケガが多かったので、稼働率は低かったが。。)

ところが今シーズン、福田選手がサガン鳥栖へ移籍し、ゴンサロ選手が退団となった。さらにそこを埋めるような「即戦力」の補強はなかった。秋山裕紀選手鹿児島ユナイテッドFCから復帰させ、佐賀東高校から吉田陣平選手を獲得したとはいえ、高選手と島田選手との差は大きいと思われ、選手層に大きな不安があった

 

②開幕後の誤算、2ボランチへの回帰

さらに、開幕後には誤算が生じる。第1節・ベガルタ仙台から第4節・ブラウブリッツ秋田までは1ボランチシステムを採用していたが、チームとして機能しなかった。1ボランチの両脇を突かれ、相手の攻撃を防ぎきれないシーンも目立っていたのだ。3分1敗の開幕4戦勝ち無しという結果を受け、第5節・ヴァンフォーレ甲府から高選手・島田選手の2ボランチシステムに変更。そこからチームは波に乗ったが、

・「この2人をどこで休ませるのか」

・「いざという時に代わりを担える選手がいるのか」

というところの不安は払拭できていなかった。

 

③最大の危機

松橋力蔵監督もその点は重々承知していたのだろう。第13節・FC琉球戦から秋山裕紀選手をスタメン起用し、「高・島田・秋山」の3人でローテーションする起用法を取り入れた。秋山選手は当初の予想に比べると、攻守ともに力を付けていたという印象。秋山選手先発の3試合も2勝1分という戦績が示すとおり、チームの歯車にハマっていた。(「高・島田」コンビに比べると守備の安定性に不安はあったが。)

 

しかし、「いざという時」は突然訪れる。第15節・東京ヴェルディの直後、チーム内で新型ウイルス罹患者が複数確認されることとなった。それに伴うコンディション不良で、島田選手秋山選手が離脱。第16節・町田ゼルビアを前にボランチ2枚が離脱する最大の危機が訪れてしまった。

 

④思わぬ起用法

これまでのリーグ戦で先発起用していたボランチ3人のうち2人が抜けてしまった状況。この窮地を切り抜けるため、松橋監督が選択したのは、

・「星雄次選手ボランチ起用」

・「高卒ルーキー・吉田陣平選手の登用」

だった。

サイドハーフサイドバックを本職としている星選手だが、大分トリニータ在籍時にはシャドーストライカーの位置でもプレーをしており、中央部のポジションにも適応力はあるとは思っていた。しかし、ボランチというポジションは攻撃も守備も両立できなければいけない上、比較対象が「高・島田」ということもあり、本職ではない星選手が対応できるかは不安があった。

また、高卒ルーキーの吉田選手もそれまでリーグ戦未出場ということや、フィジカル面や守備面での不安があった。

 

⑤星選手と吉田選手が見せた能力の高さ

しかし、そんな不安はすぐに払拭されることになる。

まず星選手町田の前半18分、ピッチ中央でイッペイシノヅカ選手がボールを運び、左サイドでオーバーラップした堀米悠斗選手に展開。堀米選手のクロスに反応してペナルティエリア内に飛び込み、フリーの状態でシュートを放ったのがボランチ起用されていた星選手だった。シュートを防がれてしまったことで評価を落としてしまった感は否めなかったが、ボランチの選手がペナルティエリア内に侵入し、シュートを放つというシーンは、これまでにあまり見られないシーンだったため、かなりの見ものだった。

続く第17節・横浜FC第18節・水戸ホーリーホック第19節・モンテディオ山形の3連戦では、攻守において気の利くポジショニングと高い技術を見せた。特に横浜FCの前半6分に見せた2点目のシーンは象徴的。伊藤涼太郎選手堀米選手谷口海斗選手を中心に敵陣中央でパスを回している間にスルスルッとペナルティエリア内に侵入すると、小見洋太選手から受けたパスをダイレクトで三戸舜介選手に渡すパスで技術の高さを見せた。第20節・徳島ヴォルティスでは、前半44分にドリブルでボールを持ち運んで攻撃の起点となると、そこから谷口選手の同点ゴールが生まれた。

そして吉田選手。町田の後半36分にリーグ戦初出場を果たすと、アディショナルタイムには相手ディフェンスラインの背後を狙った正確なループパス鈴木孝司選手に通して決定機を演出する堂々たるプレーぶりを見せる。さらに、水戸では高選手の故障により、前半32分からの急遽の投入。経験を重ねた選手でもなかなか難しいシチュエーションでの出場となったが、いきなり存在感を発揮。前半35分、自陣深くで相手の速く鋭いプレッシャーを受けながらも、高いテクニックで回避しつつ、伊藤選手にパスを出してそこからの決定機を生み出す。さらに後半39分にはピッチ中央のルーズボールにいち早く反応。相手を嘲笑うようなワンタッチパスを鈴木選手に通すと、そこから本間至恩選手のゴールが生まれた。懸念された守備力も大きな問題はなく、戦力として十分すぎるほど機能していた。

 

⑥星選手と吉田選手の良さについての私見

星選手については、島田選手高選手とは異なる「攻撃型ボランチといえるだろう。高い守備力と対人能力を持つ高選手とのダブルボランチは非常にバランスが取れている。また、元々の武器でもある「ポジショニングの良さ」を活かした動きが相手守備陣を撹乱しているという印象。攻撃時には、高選手がアンカーの位置に入り、星選手ボランチとトップ下の間に移動して攻撃参加するという形が多く見られる。ボランチの選手が攻撃参加すると、「3列目からの攻撃参加」という言葉をよく聞くが、星選手の場合は「3列目」というよりは「2.5列目」の方が適切な気がする。0.5列分だけ前に入ることで、よりスピードを持って相手ゴール前に迫ることができるし、ボランチとトップ下の間」という中途半端な位置にいる選手へのマーキングに相手守備陣も相当苦慮しているという印象。

加えて、元々サイドアタッカーだったこともあり、ドリブルスキルも高い。なので、パスコースに困ったらドリブルで持ち運ぶこともできる(それが顕著に出たのが徳島の同点ゴールにつながったプレー)。相手にとってこれほど厄介なボランチもなかなかいないだろう。

一方、吉田選手正確無比なパスで前線を操れるという印象で、町田水戸ではその片鱗を見せつけてくれた。特に町田で見せた浮き球のパス(前述のシーン)は圧巻で、「高卒1年目がリーグデビュー戦でこれやるのかよ!?という衝撃を与えた。

新潟には相手ディフェンスラインの背後にパスを出せるボランチが不足している印象が強い。(島田選手高選手も出せるとは思うのだが、あまり出している印象がない。また、秋山選手は本来このタイプのボランチのはずだが、今シーズンはそういったシーンが少ない。)

センターバック千葉和彦選手舞行龍ジェームズ選手がその役割を果たしていたが、吉田選手ボランチに入った場合、相手ディフェンスラインの背後にロングパスを通せる選手が1人増えることになる。しかもセンターバックより1列前、要は「前線により近い選手」となれば、距離が短くなる分、より正確性の増したロングパスが供給されることに繋がる。当然、ロングパス1本で決定機を生み出す可能性はより高くなる。相手は背後を突かれることを恐れてディフェンスラインを容易に上げにくくなる。そうなると、2.5列目に居る星選手やトップ下の高木善朗選手伊藤選手、サイドをえぐる本間選手三戸選松田詠太郎選手へのマークは甘くなってくる。結果、チーム全体の攻撃力が上がることに繋がっているとみている。

また、ドリブルで前に運ぶ技術も優れていて、スルスルッと敵陣に入り込むことができるのも武器の1つだ。

 

 

もちろん星選手は本職ではないし、吉田選手はまだ1年目なので、「今後も安泰だ」とはならないことは想像に難くない。しかし、島田選手高選手とは異なるタイプの2人が登場したことで、ボランチの選手層が一気に厚くなったことは事実

松橋監督が生み出した起用法でより強力となった選手層を武器に、チームはさらに成長を続けていくことになりそうだ。

 

 

以上